IEEE 標準規格 802.11ah(Wi-Fi HaLowTM)は,2022 年頃に国内での利用が解禁された 920MHz 帯の周波数を利用する通信手段のひとつである.従来の 2.4GHz/5GHz 帯を用いる Wi-Fi 規格と比べて広い伝送エリアでの IP 通信が可能という特⻑がある.また,画像や映像の伝送に適した数 Mbps のスループットが期待出来ることと合わせて,省電力の IoT 通信システムとして様々な分野で活用が期待されている.
本研究では,Wi-Fi HaLow を映像伝送手段と使用し,物体検知技術を伴ったモニタリングシステムを提案する.提案システムでは移動経路上の通路をモニタリングし,物体検知技術 YOLO v8 より得られる情報を基に混雑状況の判定を行う.多摩モノレールに接続する際に 2 つの経路がある明星大学キャンパス内で実験を行い,それぞれの経路上の道全体 が見渡せる 地点を A 地点(多摩動物園駅側),B 地点(中央大学・ 明星大学駅側)と定め,2地点のモニタリングを行った.また,提案システムがどのような環境下で安定して稼働するかを明らかにするため2種類の実験を行った.実験結果より,提案システムのような Wi-Fi HaLow と物体検知技術を併用したモニタリンシステムの稼働には RSSI が- 80dBm を下回らない環境下において,映像伝送時にフレームレートを10〜20fps に設定するのが理想であるという結論に至った.